| 内容紹介
●「土のなかで生きものがどうやって暮らしているか、知っている人は少ない。
土のなかは目に見えない。だからミミズくらいは知っていても、それ以外にたくさんの生きものがいることに、なかなか思いが及ばない。
根の先の細い根毛、それにたくさんの細菌がまつわりつき、活動している。
そういうものを一切見ることなしに、肥料を上から与え、農薬をまく。
是非この映画を見て、地上の緑の下にどれだけの生きものの活動があるか、それを思ってほしい。」─── 養老孟司(解剖学者/東京大学名誉教授)
●「生物は死んだら一体どこへ行くのか。大地に帰り、水や空気や熱の循環の中にもどる。
しかしそれは岩が風化して砂になるのとは違う。不可欠で積極的な生命現象なのだ。
つまり死は生の一部としてあり、生と死に明確な境界はない。
この映像はそんな柔らかながら力に満ちた生命のサイクルを教えてくれる。」─── 福岡伸一(分子生物学者/青山学院大学教授)
●290年前、オランダの織物商レーウェンフックは自分で磨き上げた顕微鏡レンズを使って世界で初めて、奇怪な姿をしたうごめく様々なものを世界で初めて覗いた。そして20年間もの間、彼の直感と好奇心は身の周りを手当たり次第のぞき回る。自分の皮膚の垢、牛の目玉、植物の種の内部、一滴の雨水の中にオランダ全体の人口の数ほどの微小なものを、そして自分の歯の合田の白い滓の中に「動物園のような景色」を覗き、「彼らは生きている」と叫ぶ。ダーウィンの「種の起原」刊行を溯ること200年前のことだった。
今世紀人類は宇宙空間の遊泳に成功した。立花隆著「宇宙からの帰還」の中で、NASAの生物学者ラブロックは「地球自体が一つの巨大生物であり、人類を含めた全すべての生き物はこの巨大生物に寄生している微小生物にすぎない。人間と地球の関係は、人間と人間の体内にいるバクテリアとの関係に似ている。
それは、体内バクテリアが人間を巨大生物と見ることが出来ないで、単に物質的環境としか考えず自分たちこそ最高の生物だと思いこんでいるようなものだ」と言っている。
宇宙飛行士シュワイカートも宇宙での体験でこれと同じように感じた言う。レーウェンフックの体験と宇宙での体験のイメージをダブらせる訳ではないがもう一度土の中の世界に虚心な芽を向けたい。
●構成
「虫」:太陽と水と空気で創りだすすべての生物はみな土に戻って、土を肥やす。土の中は虫や微生物による百鬼夜行の世界だ。しかしそれを、生きものたちの共生共存、住み分けの姿と見るか弱肉強食の世界と見るか……。
「虫ばかりではない」:カビの集落、酵母菌、バクテリアの集落。放線菌の集落が出す抗生物質が四方に青い海のようにカビを溶かす、1グラムの土の中に1億の生命が住むという。
「小さな宇宙」:薬で死んだ土にミミズは住めない。ミミズの糞の無限に近い広がりの中でバクテリア、微小生物の生と死が繰り返されている。
「土を肥やす」:大腸菌とて立派な生きもの。体の中に染色体がはっきり見える。驚くべき早さで増殖する、その死骸を豊かな栄養として植物の根が吸収する。地中の微小動物ダニ、が死んだ。バクテリアがダニを食べる。そのバクテリアを線虫が食べる。この線虫もやがては死ぬことになる。
「養分の吸収」:植物の無機栄養説万能の今日、稲の植物細胞が、タンパク質である「ヘモグロビン」を直接取り込む姿を電子顕微鏡がとらえた。生きている根の回りは小さな生きものたちの生活圏である。
「根の国」:根がたっぷり堆肥を含んだ土の団粒構造の中に健康な勢いで伸びて行く、その根と共におびただしい毛根が発生する。その美しさと見事さの秘密は何だろうか。根が養分を吸うというメカニズムはまだほんの少ししか解っていない。
健康でない根がカビに冒される、土の中では自然の理が働いて決して独裁者の登場を許さない。バクテリアの大量発生がカビの増殖を押さえ込む。根は生きている、活発な養分を細胞から細胞へ茎から葉へ、花へと送る。根は又たえず微生物の餌となる養分を出している。微生物を肥やし、微生物から養分を受け取る。正に共存、共生の世界だ。土と共に生きてきたのは人間だけではない。
近代農業と言う名のもとに化肥と農薬づけの生産が行われてわずか数十年、植物と微生物の共生は4億年も前からの歴史を持っている。それは絶えることのない、しかも目に見えない世界での出来事なのだ。 |