アーカイブ映像の使い方
編集に10ヶ月かかりました。カメラマンの山崎裕さんや監督の坂本順二さんに観てもらい歴史の本にあるようなものは分かっているから、全部捨てたほうがいいとアドバイスされました。
'60年安保の映像はドキュメンタリー作家の野田真吉さんと富沢幸男さんたちが編集、撮影したものがほとんど。最初から彼らはデモ隊の中で撮影しており、それはアーカイブ映像ではなくアーティストの記録(
『1960年6月 安保への怒り』'60年)なんです。国会の中だけニュース映像です。ニュース映像と米軍のアーカイブは極力へらし、使い方も変えています。
たとえば画家の池田龍雄さんが米軍兵のポートレイトを描いたときの屈辱感を語る、「いやだけど、稼がないといけないから描く」。そして、工場長みたいな人が米兵に敬礼させられているアーカイブ映像を入れる。誰もがいち早く捨ててしまうようなアーカイブ素材。あえてそれを使うことで、実はこの人は何を考えていたか、あなたにはまったく分からないのよ、と。立証ではなく、本当は何があったのか分かるような再発見がある。 |